ハニストのライブはどう良かったか〈Honey Feast 1杯目 – ハニーハウスへようこそ!- 視聴感想文〉

 7月15日、ハニストのライブイベントをニコ生で視聴したので感想を書く。イベントから3ヶ月が過ぎての投稿だ。誰も読まないかもしれないが自己満足のための記録でもある。あまりに遅筆なので、視聴当時に感じたことと、振り返って後から言語化しようとしたことが混ざっている。だから半分くらいは「感想」を書くために良いように解釈してるものとご留意いただきたい。以下本題です。

 


 なんといっても開幕のHoney Dazeが掴みとして完璧だった。開演前まで俺はライブに関してどこか半信半疑な気持ちでいたんだけど、この曲はワンコーラス時点で様々な懸念を払拭してくれた。

 白状すると、俺はHoney Dazeをリリース時に微妙曲とみなして、全然聴いてこなかった。リリース当時、パトラ製の楽曲に馴染んでいた自分は、いきなり提示されたこの商業アニソンロックみたいな曲がハニストのメインテーマ曲なのか?という感想をもった。当時は、見始めてから日が浅かったハニストのことを、きらら系の切り口で捉えていたからだ。きらら作品にいきなりメタル・ハードロック楽曲がきたらそりゃなんでやねんとなるのは無理もない。時系列では後だけど「Daydream café」を歌ったし。そういうイメージだった。

 それから数ヶ月、ライブ配信で聴いたHoney Dazeは驚くほど鮮烈だった。当時の違和感が嘘みたいに思えるほどかっこいい曲だと思った。たぶん、当時の違和感というか、その異質さがうまいこと転化したんだと思う。異質さは、ライブという特殊な時間が始まることを予感させた。
 メタルっぽいイントロが流れると同時に開演。舞台袖から(!)メンバーが躍り出ると、ミコちゃんが「人間たちー!立って!立ち上がって!」と促す。俺はうお~~マジで始まったんだなライブが!と一気に実感して熱くなった(ミコちゃんテンション激高で可愛い)(前日の一周年記念配信でもはしゃいでるの可愛かったね)。

 曲の異質さ(イメージギャップ)がライブの空気を作った、と言ったけど、別方向のはたらきもあったと思う。ライブの非日常性によって、「Honey Dazeのハニーストラップ」のイメージを補完することができたのだ。
 ライブという非日常な空間と、魔界の女王たちが働く夜の喫茶店という怪しげな世界観。ふたつが重なり合って、相互的に説得力をめちゃくちゃに上げてきた。結局のところ、俺は「Honey Dazeのハニーストラップ」を知らなくて、この時初めて目の当たりにしたんだと思う。

 「この地に舞い降りてきた 胡乱の王女たち」「蜂蜜色の月で世界を惑わせよう」 歌詞のケレン味が、設定の根本にある世界観とライブの空気感に入り込ませてくれた。
 試しにみなさんも、もしライブの一曲目が別の曲だったら?という場合を考えてみてほしい。例えば「ぶいちゅっばのうた」が1曲目だったら、このライブ始まった感は絶対に感じなかったと思うんですよね。ひょっとしたらイベントの最後までライブの空気感はなかったかもしれないとまで思う。「そして夜が来る――」かっけーーーーーーーーーーかっこいいね。

 大げさだけど、バラエティでの姿しか知らなかったデーモン小暮閣下聖飢魔IIで歌っている姿を初めて見たような感覚というか、ハニストが魔界の悪魔たちであることを改めて意識した感じで、くっっそほどテンションが上ったわけ。いや、デーモン小暮閣下は大げさだった。ともかく、そういえば魔界の女王だったよなと、プレスリリース記事ぶりに思い出した。
 振り返って思うのは、この時初めて、俺はハニーストラップを訪れる客になったのかもしれないということ。普段の配信って、いうなれば二次元アイドル系ゲームでいうプレイヤーみたいな距離感といえると思う(キモい例えで失礼)。配信が本筋でありながら、舞台裏っぽさもある感じ。そんな感じだったのが、今回のライブではその距離感から一歩引いた位置まで下がった。俺はこの時初めて完全なる客側の視点に立って、外に向くハニストの姿を見た気がした。
 別件だが、朝ノ瑠璃さんのいつかのVRライブでは、いきなり自分の隣に朝ノ瑠璃さんが現れて歌うという演出があり、めちゃくそヤバいガチ恋必死だったという評判を聞いたことがある。俺が感じたのはきっとそれの逆で、一歩引いたこと! 距離感を一歩引いたことの良さだったんだよな。
 重ねて例えるなら、アイマスをプロデューサーとしてプレイしてた人が初めてリアルのライブを客席から見た感じ……わかるかい?(周防パトラ) ハニストライブ大丈夫かな~って謎の目線で杞憂する俺くんが、一転して熱狂する観客の目線に変わったってわけ。


 色々褒めてきたけど、ここまでの感想は、流石に様々な補正がかかってのものだ。じっさい、タイムシフトで歌部分を数回繰り返すと、歌唱力は据え置きだし、振り付けも意外とバラバラだったりするのが見えてくる。それでも四人が並んで歌い踊る姿は最高で、ライブの熱気を伝える良いパフォーマンスだと感じた。良い部分を素直に良いと感じられるだけのものがあった。


 Honey Dazeの感想だけで長々と書いちゃったのでそろそろ他のことも言いたい。
 やっぱり、曲のセットリストというか構成が良かったと思う。音猫曲は最初と最後で、パトラ曲は劇パートに配置する構成。これが本当に正解だった。なんというか、音猫曲がライブイベントとしての骨格になって、パトラ曲と劇が血肉になるような作りになっていた、といって伝わるだろうか。俺は音猫曲であるHoney Dazeにライブイベント感を見出した。では、パトラ曲についてはというと、日常感であると思った。

 ハニストがライブイベントをするにあたって、その中身を満たすだけの音楽的な活動はそこまでしていない、という問題があると思う。あえて言うならね。
 歌枠を頻繁にやってるVtuberなら、ライブイベントで歌うというのは、普段の活動の延長上にある晴れ舞台だ。練習と本番の関係というとニュアンスは違うが、積み重ねてきた活動の集大成としてのライブの魅力というものはある。
 音楽に一芸を持っているVtuberたちに比べると、現ハニストは、いくつかのオリジナル楽曲を生み出してはいるものの、あまり音楽的な活動をしているとは言い難い。ライブイベントをやると発表された時、なんか急に普段と違うことにチャレンジしちゃいました感が出るのでは?みたいな懸念がなくもなかった(あえて言うならね)。ようするに、ハニストにライブイベントは成功させられるのか? 見せられたものに俺はのれるのか?という懸念だ。歌担当のエリも去ったわけだし。

 そんなふうに懸念する俺を大満足させて、ライブイベントに血を通わせたのが劇パートだったんだよな~!
 ライブを鑑賞・視聴していない方に説明すると、ハニスト1周年を祝おうぜ!というお話の劇が約一時間に渡って展開されたんですよ。ミュージカルのように歌パートがあって、「ぶいちゅっばのうた」や「よっぱっぱのうた」等のパトラ楽曲が劇中歌として歌唱された。脚本は堰代ミコが原案を担当したかたちだ。
 この劇がすごく良くて、ライブのメインコーナーと言っていいと思う。「Honey Daze」の非日常感とは逆に、舞台にいつもの配信の日常性を感じた。さっき書いた歌活動とライブの関係の観点でいうと、普段の全員コラボ配信の大舞台バージョンが今回の劇だったんだよ。バレンタイン回の時にやっていた声劇を思い出す感じもあり、非常に親しみがあった。ライブイベントに「中身」がある…!と思った。


 そして、パトラ楽曲はハニストの日常と不可分であることも改めて感じた。
 パトラの製作楽曲って、パトラの人生観や思想みたいなのが歌詞にバリバリ出てるわけじゃん。それは平時の配信から生まれたものだったり、あるいは思想から配信の言動が生まれたりして、配信の印象と強く関連付けられている。つまりLOVEなんだけど…。
 劇はハニストの日常性(たぶんLOVEなんですけど…)をステージ上に引っ張り出した。それがパトラ曲を歌う演出としてめちゃくちゃバフをかけてたんだよな。パトラ曲を普通にセトリに並べるよりずっと効果的だっただろうと思う。ハニストが自家製でお出しできるものの詰め合わせセットって感じで非常に良かった。ミコ脚本とパトラ楽曲。他箱にはない独自性をライブで見せた。
 またこれは、どこまで本気かハニスト運営権を乗っ取る野望をもつパトラの力量を計る試金石となったのかもしれない(これは超後付感想です)。 


 でさ、ぶっちゃけいうとまあ生歌ではなかったわけなんだけど(歌は収録音源だと俺は見て取った)。それに関して否定的な気持ちはない。常日頃から練習を重ねたりライブの場数を踏んでる人でなければ、歌と踊りを両立させることは難しい。だったら8割被せでも収録音源でもかまわないので、かっこいいステージを見せてくれるほうが嬉しい。歌を売りにしている歌手ならともかく、ライブの価値は生歌だけではないからだ。極端だが、初音ミクのライブに生歌じゃないと怒る人はいない。
 実際、自分が見てきた他のライブイベントでも、そういう措置がとられることは珍しくない。しかし、生歌でないとライブ感は弱くなりがちである。その点は、ダンスの完成度や衣装の原作再現、舞台演出などの要素、顔が超良い、はたまた現場の熱気などでカバーされるものだと思われる。ならばハニストはどうすべきか、同時にバーチャルとなると果たして……というのがまた懸念要素ではあった。


 やっぱりそこをクリアしたのもやっぱり劇だったんだよな~。アドリブたっぷりの劇は「ライブ感」がすごくあった。もし劇が台本にかっちりだったら、イベントの水増しパートだと感じていたかもしれない。
 パトラはよそ行きモードが出つつも花形だったし、シャルとメアリの立ち回りも光るものがあったし、堰代ミコは面目躍如あんたが大将って感じで大暴れしていた。申し訳なくもメアリとシャルに気の利いたコメントができていないのは、俺が普段あまり見ていないからなんだけど、上手く言えないだけで目を引くシーンは何度もあって、いつもとは少し違った一面を見れた気がした。


 そして、劇の最後に披露された「来たれ!甘い組」良かったですよね。このライブのクライマックス。ライブに向けて作られたノリの良い曲調が良いし、やっぱり3Dの体で4人並ぶことの画面的な魅力が大きかった。「悪魔の尻尾絡ませて」の尻尾をフリフリする堰代ミコ、めちゃくちゃ良かったね。この日のベスト良(よ)ポイントのひとつだった。

 
 ところでこの曲、ソカっぽくて要はライブ意識で睡蓮花っぽいし、絶対タオル曲だと思ってたんだけど特にそういう言及もなかったですね。そう思いきや、サビの振り付けが明らかにタオル曲のそれだった。どういうことだったんだろうか? 現地ではタオル回してたオタクはいなかったのだろうか? Vtuber界のポスト湘南乃風楽曲として育っていってほしい。


 感想終わり。本当はライブがあった週にこれを書いて「超良かったからみんなチケット買ってTS視聴しよう!」っておすすめするつもりだったんだけど、ブログをアップするのに視聴期限から2ヶ月半かかった。言語化するのとブログ化するのに一生を使ってしまったし、途中から方向が自己満足に向かってしまった。感想を言うのが苦手。ライブはメンバーもななし運営も次回をやる気満々みたいなので期待している。ソロイベントは配信があったら見たり見なかったりしたい。