#幻想郷ホロイズム がめちゃくちゃ刺さってしまったので感想を言いたい

『#幻想郷ホロイズム』を聴いて、俺が涙したって言ったら、それもちょっとどころではなく完全に泣きアニメになったって言ったら、みんなどうする…?

 

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作品の詳細についてはオフィシャルを見てもらうとして、ここでは東方はにわか知識でVはまあ好きという立場から聴いたこの作品の感想を書きます。


宝鐘マリンが幻想入りする二次創作ボイスドラマというのは、我々がVtuberという在り方を認める以上、それは実際にあったお話にかなり近い説得力をもつ。つまり、作中で東方の世界を体験した宝鐘マリンと、いつも我々に配信してる宝鐘マリンは同一人物なんですよね。
いや、言い過ぎました。でも、船長が東方二次創作の大家たちのオファーを受けて『#幻想郷ホロイズム』という大作を作り上げたことは、Vtuber的にはそう言っていいくらいの意味があると思っています。
劇中では、船長はトラックに跳ねられて夢だった東方の世界に行ってしまうわけですが、実際の船長は二次創作を手段として「宝鐘マリンが東方の世界に行く」夢を実現しました。「東方の世界に行くという夢」を叶えたという点で、これってVtuber的にはほとんど同じことじゃないですか?(そう思ってるのって自分だけ?)

自分は、Vtuberのロマンはアニメやゲーム等の二次元ジャンルとの親和性の高さにこそあると思っています。ゲームに出演したりとか、サンリオキャラとのコラボグッズが出たりとか(これは実在人間でもあるけど)、そのVtuberが好きだった作品世界と、同じ次元で繋がれることにロマンや夢がある。それはVtuberという在り方の承認とも感じられて、やったな!という気になれます。
今回の例はあくまで二次創作だしもちろん東方の懐がガバガバに広すぎるというのはありますが…。

そういう面が『#幻想郷ホロイズム』に通底するテーマになってる気がします。Vtuberと宝鐘マリンを特大肯定してる作品なんですよね。


東方のことはよくわからないので、収録曲を中心に感想を書いていきます。

 

■ホイホイ☆幻想ホロイズム / 宝鐘マリン with ホロイズムファンタジー

「あの日みた幻想郷 いつも一人で憧れるしかなかった ありえない話でも 願い続けて世界は広がった…!」という歌詞で上述のすべてを表しているのが、この曲です。『#幻想郷ホロイズム』のOP的ポジション。ホロイズムファンタジー(三期生ですね)よる楽しい合いの手が特徴的です。
アップテンポで楽しい曲なんですけど、あまりにも泣き曲すぎてめちゃくちゃ刺さってしまったんですよね。
「ホイホイ☆アホイ ホイホイ☆アホーイ」みたいな合いの手が入っている曲がどうして泣き曲になってるんだよ…。というわけでその理由を言語化してみることにしましょう。

泣き曲なのは、夢の実現、大航海の予感、東方への愛、が詰め込まれているからなんですが、「宝鐘マリン with ホロイズムファンタジー(三期生)」であることがクソデカいんですよ。

一番の泣き曲要素は、Bメロの「大航海 待った無しの (船長!行こうよ船長!)」です。この合いの手がマジで好きすぎて狂う!!!
ここでエモを最大にためてからの「出航だ!(ヨーソロー!)」でサビに行くカタルシスがめちゃくちゃ凄い。大泣きポイントです。

「船長! 行こうよ船長!」の合いの手に、船長が東方の世界へと行くこと(夢の実現)を三期生の仲間たちが後押しするニュアンスが溢れていて、宝鐘マリン主人公回!!!!みたいな大肯定感が出てるんですよね。それがなぜ泣けるのかというと三期生だからとしか言えませんが伝わるはずです。

いやそれにしても「宝鐘マリン主人公回」なんですよね。
『#幻想郷ホロイズム』は「宝鐘マリンが主役の東方作品」なんですが、このOPがあることで、「ホロライブ三期生の括りの宝鐘マリン主人公回」という性格が見えてきます。アニメでいう当番回みたいな感じ。今回は宝鐘マリンの当番回で、(みんなで)東方の世界に行っちゃうエピソードなんですよ。自分の本作の見方って結構それかもしれない。コンセプトからずれる見方かもしれなくて申し訳ないけど、“ホロライブファンタジー”の面目躍如な解釈だから結構好きなんですよね。

関連してもう一つ言いたいのが、宝鐘マリンが幻想入りするドラマを作るにあたって、東方キャラクターのCVはホロライブメンバー以外に考えられなくない? ということです。仮に人気声優だったり、別の東方二次創作のキャストをそのまま起用していたとしたら、自分は本作にこれほどの説得力を感じなかったでしょう。事前情報が出た時は、東方×Vtuberという異色のボイスドラマが生まれてしまうことにヤバい気持ちになりましたが、船長が幻想入りするならこれより納得できる配役はないよな~と思います。(自分が東方二次創作に詳しくないだけで身内で固めるのが基本なのかもしれませんが)

言うなれば三期生を始めとしたホロライブメンバーが作った東方の世界なんですよ。そういう観点で「いつも一人で憧れるしかなかった」「キミたちとならどこまでも」の歌詞がガンガンに刺さってしまう!!! 『#幻想郷ホロイズム』はクリエイターの面々が作った作品ですが、その東方の世界はホロライブメンバーが船長の夢に付き合ってくれてるかたちで出来た世界とも言えます。船長の大航海を肯定するホロライブファンタジー、船長を東方の世界に誘うホロイズムファンタジー。そういう解釈をして自分はオンオン泣いています…。

歌詞の一人じゃなさについては順当に読めばリスナーたちのことでもあるのでしょうが、船長が三期生全員出演を打診したという背景からどうしても三期生寄りの目線で見てしまいます(好きなので)。

 


■キャプテン・マリンのケツアンカー / 宝鐘マリン

俺がイメージしてた東方ボーカルアレンジってこれだ!!!
実際、ノリに古傷が痛みました。IOSYSのノリは自分が多感な時期のあれこれと結びついているので…。
このカバーは発売前にD.wattさんがDJでかけていたこともあって、全曲こんな感じなのかな~と思っていました。事前情報の時の怖いもの見たさの感覚はだいたいこの曲のせい。
というかカバー元知らなくてちょっとショックでした。2010年。ニコニコ動画で人気のジャンルとして東方に触れていた自分は、その頃にはニコニコ動画を見るのをやめていたらしいね。

この曲は劇中の歌枠で歌った曲という扱いになっていて、ボイスドラマにそれっぽいエフェクトがかかって歌枠配信っぽい演出になっていたのが良かった。
ノリに恥ずかしさを感じつつも、意外とそんなに恥ずかしくないことに、Vtuberで“空気”に慣れてしまっているな…と思いました。

 


■シアワセうさぎ・ぺこみこマリン / 兎田ぺこら、さくらみこ、宝鐘マリン

2020年に居住まいを正して『シアワセうさぎ』を聴くことってあるんだ。それこそ10年前とかの自分はこの曲をニコニコ動画で聴いた気がするけど、たしか特に何も思わず、電波曲だけでなくこういうのも人気なんだな~で終わったはずです。曲情報を見てギリギリ思い出した感じ。10年前に10代だった自分に教えてやりたいですね、「今おまえが聴いてみてふ~んで終わった『シアワセうさぎ』だけど、2020年のおまえはVtuberとかいう半実在女ふたりの““イメソン””として鬼リピで聴いてるぞ」って。未来に絶望してしまうかもしれない。ぺこみこのイメージソングと化したシアワセうさぎ、マジでなんなんだよ…。

ぺこみこ(マリン)ハーモニーが良くて、Bメロのかごめかごめのメロディが気持ちよすぎる。正直曲に古さを感じなくもないのですが、かごめかごめパートの美しさにはハッとさせられました。

本作全曲に言えることですが、製品としての歌がリリースされるのがかなり嬉しい。ちゃんとしたオケにMIXとマスタリングがされた音源がローカルで聴ける喜び。ホロライブからリリースされてる既存3曲に全然負けていません。
歌唱者のそれぞれの声質がはっきりと粒立っているのが嬉しいんですよ。SSSやキラメキライダーは好きですけど、誰が歌っているのか判別できなかったり、声の魅力が活きてない曲は歌としてあまり楽しくないので…。
ぺこみこデュエットと船長ときたら、自分はもう何も言うことはありません…。

ちなみにぺこみこ配信はArkの砂漠の洞窟攻略回が一番好きです。

 


■イヤホンロマンス / 宝鐘マリン

宝鐘マリンのキャラソンじゃん!!!!!
この曲マジで凄くないですか?

イヤホンロマンスの歌詞、もしかしなくても“船長が高校時代にガチで好きだった女”とのエピソードが元ネタですよね。「夕暮れ 鐘の音」という、放課後のチャイムを表す常套句を手がかりにするまでもなく明らかです。
一例を挙げるなら「月が照らした白い肌 触れていいワケ探して」なんて、高校時代スキンシップが激しい船長がその女のことはガチで好きだったから理由なく触ることができなかった話そのものです。

「恋い焦がれ幻想郷」がキーワードになっているけどあんまり東方関係なくない? “昔好きだった女”への気持ちを幻想郷への恋と重ね合わせて間接的に表現してるのかな……。
ちょっと謎だったのでまとめ動画を見ておさらいしてみました。

www.youtube.com


要約してみます。女子高の風土がノンケだった船長をその女のガチレズにした。ボディタッチするタイプだけどガチ恋だったから理由なく触れたりできなかった。その女に東方の原作を教えてもらい貸してもらった。一緒に曲を聴いたりして東方原作への好きを高めていった。3年の時に手を繋いだら「おまえはちょっとガチレズっぽいから怖いわ」で恋が終わる。今も仲がいい。

つまりイヤホンロマンスは………宝鐘マリンの東方のルーツを辿る曲!!!!!
いや、良すぎる……。

女子高時代にクラスメイトガチで好きになったことがある、東方原作を始めたきっかけもその女である、という2つの項目が結びついて「恋い焦がれ幻想郷」に集束する歌詞世界に、東方ボーカルアレンジならではの技を見た気がします。

メタ次元の船長の高校時代のエピソードが東方好きのきっかけでもあるという点から拾い上げられて、Vtuber宝鐘マリンの東方ボーカルアレンジ曲の形になって、作中では幻想郷に至ることで語られる船長のルーツみたいな立ち位置になってるの、上手くいえないけど良すぎるでしょ。「貴女と過ごした過去が動き出す」んだよなぁ……。
過去の失恋話も作品になることで肯定された感じがあり、またここでも肯定だな~と思います。

そういえば自分の高校時代にも、東方原作を貸してくれたオタクがいたし、東方原作がわかる好きな女もいたし、登下校のバスではイヤホンで東方の曲を聴いたりしていたんですよね(一人で)。でも俺の体験は曲にはならないし、Vtuberになって幻想入りもしないじゃないですか。凄さってそこなんですよね。
逆に言えば、イヤホンロマンスは俺たちのそういう過去に少し寄り添ってくれてる曲でもあると思わなくもない。「イヤホン越しのロマンス」を、曲を通した東方世界への普遍的な想いと解釈したい気持ちがあります。高校時代に東方を好きになりそうだった時期があり、以後ハマっているわけではない立場から聴く『イヤホンロマンス』の郷愁みたいなものがね、あるんですよね。

曲の面でいうと、もし東方作品と無関係にこの曲がソロ曲として発表されていたとしても超喜ぶくらいの魅力があります。アレンジも音域も、船長の声の良さを引き出していて素直に良い。やっぱりこういう声質バリ立ちのソロ曲は嬉しすぎるんですよね。

東方原曲が4曲も盛られていることにも気合っぷりを感じます(東方アレンジの世界を知らないので4分半の尺で4曲も組み合わせることあるんだと驚きました)。

 

■Over the Border / 宝鐘マリン feat.不知火フレア

D.wattさんのクラブミュージックな編曲が好き。
ED的なポジションでしょうか。
ドラマパートのクライマックス、さあ元の世界に帰るには…というトラックの次にかかる曲です。
愛する人が愛するものを愛することを祝福する世界。あなたが住むのはそういう世界なのかも」「幻想郷が扉を開くくらいだもの、さぞ良いところなのでしょう」という特大肯定台詞がドラマパートにあるように、そういう曲になっています。
異世界転生モノで異世界側からの褒めを素直に喜んだら終わりだろと普段なら反省するのですが、それが『#幻想ホロイズム』の本質すぎて素直に感じ入ってしまいました。なぜなら作品愛から始まった作品だから…。

配信者を主人公にしたドラマの見せ場を配信シーンにもってくる作劇、あまりにも本質だし、劇中配信トークの臨場感と泣きアニメっぷりと本質ぶりが見事で、愛の熱量にちょっと泣いてしまいました。リスナーも待ってるし帰らなきゃって流れでいつもの「配信」を見せられたら流石に食らってしまいますね(話の理屈はわりとガバガバですが)。


全体を通して、仲間との繋がり、過去との繋がり、繋がる世界、というふうに見ることもできるかもしれないけど、そうやって型にはめようとするのは野暮かもしれません。

 

■Help me, ERINNNNNN!! #幻想郷ホロイズムver. / 宝鐘マリンと愉快な仲間たち

2020年に『Help me, ERINNNNNN!!』を能動的に聴くことってあるんだ。
これも10代の多感な時期の様々な記憶と結びついてる曲なので、ちょっと覚悟が必要かな……と思いきや、すでに意識がチューニングされていたらしく完全に正面から聴くことができました。
カーテンコールの立ち位置でしたね。なんかライブでもコーレス曲としてそんなふうになってる映像を大昔に見たことがある気がします。
ラスサビで「えーりん」が「船長」に変わるやつに普通に食らってしまった(なんでも食らうようになってる)。
こんなん聴いてたらTwitter中学校のクラスでいじめられてしまう…と思っていたのに、全然受け入れてしまって驚きました。先入観をひっくり返すパワーがある作品だったな~と思います。

 


■おわりに
まとめとしては、冒頭に書いたように、VTuberのロマンがあるのと、東方の懐のデカさでVtuberと宝鐘マリンを特大肯定してる作品だな~と思いました。でも、好きだったら好きだって叫べっていうのが根幹にある作品だからいやらしくない。
船長のファンなら東方知らなくても買うべきと勧めます。

楽曲はどれも期待以上の水準で大満足。
当番回にキャラソンが6曲ついてくるようなもんと思うととんでもなさすぎる。
曲目的で買おうか検討してる人がいたら、間違いないから買えと勧めたい。

ドラマパートについて。
ホロメンが演じる東方ボイスドラマを聴いて精神が耐えられるのかぶっちゃけ不安だったけど、いざ聴いてみると「これは声劇配信だ」と脳が理解して適応しはじめた。声劇配信、稀によくありますよね。演技は上手い人とそうでない人がいる。Vtuberを見続けてる時点でその“空気”に知らず識らず慣れていたことがわかり、複雑な気持ちになった。
ドラマパートのみに出演してるVのファンには声劇に2000円出せるか検討すべしと伝えたい。

東方ファン側から見てどうなのかは全然わかりません。

DLsiteでデータ版を買ったら256kbpsのMP3ファイルだったのはちょっと残念(そのぶんCDより安い)。

そういう感じです。
めちゃくちゃ刺さった作品の、刺さった理由の言語化でした。

 

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