『推し、燃ゆ』を読んだから #知るかコラボ の読書会に参加しようかな…

 

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【真夜中の読書会】課題図書『推し、燃ゆ』 #知るかコラボ【獅子王クリス・大浦るかこ / あにまーれ】

 

読書会に参加するには読書感想文を書けばいいんだろうか。感想文にしても何をどう書けばいいのかわからないが、ひとまずこの本について何か言うには、最初に自分の立場を明確にしなければならないと思う。
自分は現在、「推し」不在のオタクである。それでも過去には「推し」のような対象はいて、山下あかりのように推しを解釈するブログのようなものを書いたこともある。同じラジオ番組を何度も繰り返し聴く日々のなかで、ふとわいた疑問を知るために、その対象が出演したニコ生やネットラジオや雑誌を当たれるだけあたって発言をチェックし、自分なりの解釈のようなものをまとめてブログに書いていた。今読むと稚拙なものだが、閲覧数とオタクからの反響は少しばかりあった。
P43「床に散らばったものを踏みつけながら洗面所に向かう。デニムのファスナーと漫画本の帯、ポテチの袋の銀のぎざぎざの部分が足の裏に刺さる感触が膝あたりまでのぼってくる。」とまったく同じことをした記憶があるし、親族の葬儀のタイミングで両親に無職であることを詰められたこともある。
そういうわけで、山下あかりに対して「何という俺www」と思う部分が多々あり、当然、そうでない部分もより多くあった。

 

散漫な感想だけど書いていきます。

 


■オタクブログ?
読み始めは、「推しが結婚した時にイベノ上位のオタクが自身の半生とともに推しについて語るブログのそれじゃん笑」と思った。結果的に推しは結婚するので当たらずとも遠からずだった。山下あかりが抱えている重さは、読んでいて「笑」で済ませられないほど苦しいものだったが、結局そういうオタクの自分語り込みの推し語りのノリで読んでしまったかもしれない。だから本文中にオタクというワードが2回しか出てこないことに驚いたと同時に、オタクという言葉で単純化しないことに感心もした。読了時には、「解釈のオタクが推しを解釈できずに死ぬ話じゃん…」という感想に変わった。


■ピーターパン
山下あかりが初めて真幸に出会ったピーターパンの舞台。
「大人になんかなりたくないよ。 (…) 私のための言葉だと思った」
これがさぁ…。いわゆるオタクの原体験が、自分の境遇と繋がってるタチが悪いやつ!
で、最後のライブで真幸はもうずっと前から大人になっていたことを知るわけなのがさぁ…。ピーターパンでありたかった自分と、ピーターパンを“演じた”推しのギャップがさぁ…。

 

■祖母の死 人生のイベント
オタクが苦手なものといえば生活ですが、その上位存在として人生がありますよね。入学や卒業、就職、試験、引っ越し、そして葬式。祖母が亡くなった展開に俺は「やっぱ来たか…」と予感的中のような感覚があった。
通夜前にも推しを摂取するやつ、わかる~。
「居間に戻ると、何故か就活の話になっていた」俺も経験ある~。
身内の不幸で集まった場で両親に就活しろと詰められるやつ、わかる~。
「働かない人は生きていけないんだよ」「なら死ぬ」 似たような会話した記憶がある~。

その晩に発生した成美からの繋がり報告には流石にウケてしまった。友人がメン地下と繋がる展開があるのはウケてしまうでしょ。「繋がりました」の一文には本当に笑わされた。(女子高生と繋がったりすな~!)
ひとしきり笑ったけど、成美も推しメンと繋がるというオタクとして一応の“ゴール”をして、いわばオタクを降りて、人生をやっていくってことなのか…。悲しいよ。成美はそれができる器用なオタクなんだよ…。物語の結末からすると、推しが辞めても繋がっていればノーダメですからねという話か。

それと父がネットでは女性声優おじさん構文リプおじさんであることも最悪すぎて笑った。この部分だけ辛さの質がギャグに振れてない?

 

■山下あかりのブログ、SNS描写
高校一年生~二年生なのに、ブログの文章が落ち着いていすぎるでしょ。本当に偉すぎる。その年頃のオタクならもっと「語彙力w」とか「優勝!」「最the高」「尊い…」「エモ死」とかのネットのオタクノリを連発する文章を書いてもおかしくないのに。偉すぎる。CD積んだりグッズ買いまくったりの推し方もちょっと高校生離れしてる気がするんだよな。
対して、SNSのコメント的なものはリアルっぽい。特に女オタクの怖い書き込みがよかった。〈は?????? せめて隠し通せ?????????〉はありそうすぎて笑った。その中でも男ファンのような雰囲気の文章も散見されるのがまたなんというか。というか男女混合アイドルグループってレアケースすぎないか? 男女混合アイドルグループのメンバー5人でグループ内人気投票やってるの地獄ぎるでしょ。どういう戦略? きっとファンは女性が多数派なんだろうな。

 


■推しが燃え、自分も燃える
最後のパート
P124「しばらく、部屋全体を眺めていた。縁側から、窓から、差し込む光は部屋全体を明るく晒し出す。」って文章が俺にも効く。それまでは部屋の中心にある推しの祭壇しか見えてなかったのが、推しの消失により散らかったものも視界に入る。部屋って散らかっていたり汚かったりしても視界に入っていなければ問題ないですからね。
散らばった綿棒を拾うのは、推しが燃えて、同化していた自分も燃えて、そのお骨を拾うということなのは言うまでもないけど、つまりこのタイミングでオタクをやめれたってことなわけよね。

P125「這いつくばりながら、これがあたしの生きる姿勢だと思う。」
推しという背骨を失ったなら這いつくばるしかない。推しが住んでるらしいマンションを見て、推しが人になってしまったこと(人は解釈できないこと)を実感してさぁ…。推しがファンの女性を殴った理由は未来永劫わからない。解釈のオタクは死んだ。

P125「二足歩行は向いてなかったみたいだし、当分はこれで生きようと思った」
これ、「当分は」がエグい! 新しい推し、またはそれに準ずるものができるまでの「当分は」ですよね。
 床に散らばったゴミを片付けようと思い至ったのは、推しが中心の生活を脱して、自分の人生を始めるというポジティブな描写ではないはず。極端にいうと、オタク活動という「やりたいこと」がなくなったし「やるべきこと」をやるかってくらいの心理なんだと思う。その日やりたいことをやらないとやるべきことに手を付けられないやつの拡大版だと思う。だから山下あかりは道のりは長くてもこれから少しずつ人生をやってくかもしれないけど、いつか新しく推しができたらまた以前の生活に戻るだろう。這いつくばれば人生はやれるかもしれないけど、そこに喜びはない。オタクはオタクをやることにしか喜びを感じない。オタクをやる合間に人生をやるんだよな。

 

 

■総括?

・やっぱり、人間を解釈しようとすることの業ですよね
・推しがアイドルから人になったのは、ファン女性を殴った時点であって、引退した時ではないということ…? 
・山下あかりが解釈のオタクじゃなかったらもっとマシだったのかもしれない。どうだろうか?
・ピーターパン便利すぎん?
・バイトの描写から辛さが加速していったな…
・俺も部屋にペットボトルの山とか腐ってるものとかがあるけど、その程度で理解者ぶっていいのだろうか?

感想はまたあとで加筆したりするかもしれない