上田麗奈 デビューミニアルバム『RefRain』がすごいという話がしたい

こういうふうに聴いてほしい、受け取ってほしいというよりは、ああ、こういうふうに生きているんだな、となんとなく感じてもらえたらと思います。そのうえで聴いてくれた皆さんがどう感じたかを私は知りたいし、教えてほしいなと思います。そんな気持ちです。一緒に“上田麗奈”を探してもらえれば、私としてはすごくうれしいです。

リスアニ! Vol.27 (M-ON! ANNEX 612号) (P145)

 

■はじめに

上田麗奈さんがインタビューなどで感想を教えて欲しいと言っているのを見て、上田麗奈デビューミニアルバム『RefRain』について、自分なりの感想を書いてみようと思った。書いてみることで自分の考えを整理する目的もある。
このアルバムはめちゃくちゃ素晴らしい作品なのに、めちゃくちゃに絶賛する評価が不当なほど不足していると感じたので、どれだけヤバいアルバムなのかという面も含めて力不足ながら説明してみようと試みた。
とはいえ全然わからない。わからないが、とにかくわかったつもりになった部分を、自分の解釈として書いていく。
こういうのは、リリイベ全通してるような真剣オタクほどネットで感想を言わないものなので難儀なものだと思う。
筆者はリリイベには行っていないのでその方面の有用な情報はむしろ教えて欲しいです。

 

 

■前提として

このブログを読もうとしてるあなたが『RefRain』をまだ聴いていないならば、ハイレゾ配信ページにある紹介が最適なので、概要として読んでほしい。ちなみにCDよりハイレゾの方が安い。

音楽ダウンロード・音楽配信サイト mora ~WALKMAN®公式ミュージックストア~

そして試聴動画を聴いてほしい

上田麗奈 / Debut Mini Album「RefRain」試聴動画 - YouTube


次に知っておいてもらいたいのが、アーティストデビューに至る経緯だ。

・1年以上前にオファーを受け、約1年返事を待ってもらった。
・歌が苦手であり嫌いだった。ライブ体験も出演が初だった。
・キャラソンにも初めは悩んだ。(何故そのキャラが歌うのか。芝居の延長として納得)
・自分が歌う意味がない限り歌えない。
・音楽活動の是非を先輩やスタッフに相談したら皆に賛成された。
・その経験は役者の演技につながるし、音楽も表現の一種である。
・あくまで役者としてやらせてもらえるならということで承諾。
・いつの間にか作詞までしちゃう。
・「ライブやりたいです」とまで言っちゃう。

雑誌などのインタビューを大雑把にまとめるとこういう感じです。
歌が苦手であり、自分が歌う意味がないと思っていた上田麗奈さんが、アルバム制作を通して音楽活動に意味を見出していくという経緯は、このアルバムを聴く上で知っておくとベターだと思う。

知っておくメリットとして、リスレゾの紹介が簡潔なので引用する。

一人の少女が扉を開けて新たな世界へと踏み出す物語が描かれており、それは「歌」という表現に真摯に向き合い、今作を作り上げた上田麗奈の姿にも重なる。

上田麗奈 / RefRain – リスレゾ – “ アニメ音楽 × ハイレゾ ” の情報サイト

それ!!!!(大声)

……しかしよくよく読むと、自分の解釈とは異なるのだが、それは後で説明する。


上田麗奈さん自身の変化と『RefRain』のテーマが重なるのは、上田麗奈さんの夢日記や絵、普段考えていることといったイメージから楽曲制作が始まっていることを踏まえると、さほど特筆すべき事ではない。称賛すべきはそれがひとつの作品として昇華されているところにある。
一曲一曲が確かな強度を備えながら、それでいて穏やかなBGMのように通して聴くこともできてしまう仕上がりは本当に素晴らしい。集中して聴けば楽曲の世界が強く主張するが、リラックスして聴けば良質なBGMとして機能するバランスになっている。

楽曲派()としてその素晴らしさを力説したいところだが、残念ながら筆者はコードのコの字もわからない。楽曲的な良さと歌声の美しさと表現力に関しては試聴を聴けば一瞬でわかるので、ここでは歌詞の方面から攻めてみたいと思う。

一曲ずつ、その基本情報、テーマ、私的な感想などを、雑誌やラジオをソースにやっていこうとおもう。

 


■1.マニエールに夢を
作詞:松井洋平上田麗奈 作曲・編曲:佐藤純一(fhána)
〈何もできずに繰り返し同じところを歩いているだけの自分を表現した曲〉(※以下文中の山括弧はリスアニより引用)
・「自分が変わろうと思えばどんな自分にもなれるはずなのに、変わることができない、意気地なしな自分」を表現した曲。
・モネの絵を思い浮かべて歌った。
https://twitter.com/ReinaUeda_Staff/status/808976728022339584

アルバムの一曲目であり、朝のイメージを感じる。ブックレットに描かれている太陽がこの曲に相当するのだろう。※このページにある①の絵 上田麗奈 | Artist | Lantis web site


晴れた日の朝に、散歩しながら聴くと心地が良い。上田さんが散歩好きであることは有名だ。この心地よさはアルバムを通して感じられるが、歌われている内容を意識すると、その世界に入り込んでしまい、あっという間に30分が過ぎ去ってしまう(そしてRefrainする…)。そしてこの曲と対比して『あなたの好きなメロディ』は夜を歩いている曲だろう。


「晴れた空なんて、久しぶりに見た」という最初のフレーズからは、上田さんの出身である富山県の少ない日照時間をイメージする。ラジオハナヤマタ過激派としては、第26回放送で上田さんが述べている、初対面の人とはまず事実的なこと――例えば今日の天気――から会話に入る、という手法の応用であるとも思える。いずれにせよ、アルバムの始まりにふさわしいキャッチーかつ納得のフレーズだ。


この曲を聴いていて思い浮かべるのは、上田さんが話す、生活の話だ。
上田さんが自身の話をする時は、生活の中にある自分の話をする印象がある。「この日こういうことをした」というのではなく、「普段こういう生活をしている」という捉え方で話す。「生活」「生きている」という表現がしばしば目に留まる。疲れた時は人に会いたいとか、知識欲だけで生きているだとか、自分と生活観や生き方ををセットで語る人というイメージがある。(いつも疲れた時の話をしている…)

曲から感じられる生活観を具体的に挙げると、
「考えることも止めさせるようだ」から続く歌詞からは、部屋に“虚無”がある話を思い出すし、「今日は何をたべようか」という歌詞も、一日五食の週があれば一食未満の週があるという話を思い出す。虚無とは「休日寝て起きたら目の前にある壁や天井を見ながらそのまま一日過ごす」という状態だという。

虚無と食、この2つの関連を掘り下げると、「自分のためにご飯を作ることができない〔…〕自分の家になると全く生きてる気がしない。虚無ですね」という発言に行き当たる*1。虚無の話は頻繁にしている…。
また、自分の部屋ではまったく飲食をしないという話もあった。一人暮らしの部屋は「物を置くのが苦手で、飲み物すら持ち込まない無機質な家だった」という*2
その理由について、「食べ物はエネルギーが強すぎて部屋に置いておきたくなかった。部屋の中はできるだけ物を減らして、部屋で飲むことも食べることもしたくなかった」と語っている*3

といったような生活のエピソードが想起されて、楽曲のイメージを深めていく。


部屋に食事を持ち込まなかったエピソードが過去形なのは、その状態から変化があったからだ。冷蔵庫の電源を入れてそこにペットボトルが入り、少しずつ食事も作るようになり、文化的な生活を送るようになったという。アルバムの最後に位置する『あなたの好きなメロディ』の「繰り返しの日々もかたちを変えていく」とは、このような生活の変化なのだろうか。

一曲目から長くなったが、このミニアルバム『RefRain』は、上田麗奈さんが上田麗奈自身を表現する作品であるという性質の強さがわかっていただけだだろうか。

 


■2.ワタシ*ドリ
作詞:松井洋平上田麗奈 作曲・編曲:田中秀和(MONACA)
〈コンプレックスがあるから表向きの自分を作って、表向きの自分で仕事をしたりふるまっている歌〉
・社会に出た時にいつも明るく振る舞い、そうやって誰かを愛し、愛される人でありたいという表向きの気持ち。
・『車庫の少女』と対になっているhttps://twitter.com/ReinaUeda_Staff/status/809345679613038592

上田麗奈さんは、その時々の作品や会話相手によって振る舞いが違うように感じられる。ラジオやニコ生でも作品によってテンション感が結構違う。普段は人見知りをしていて「ラジオとかニコ生とかイベントとかの時に、思い切りテンションを上げて壁を作るか、すごくスッてしてきれいにして壁を作るか」のどちらかだと話している*4

表向きの自分というのは、上田さんに限らず、多くの人が備えている一面だろう。例えばオタク一人を例にしても、職場で同僚と仕事をしている時のオタクと、わんぱくひろばでわんぱく達と過ごしている時のオタクとでは振る舞いが違い、異なった自分の役割を演じている。上田さんはそのことに関して、特に自覚的なのだと感じた。もちろん単なる公私でオンオフがあるといった話ではないのは承知しているが。

A&G NEXT BREAKS 田中美海FIVE STARS上田麗奈さんがゲスト出演した際に(実質ラジオハナヤマタ)、「ゆる~っとした普段とステージ上とのギャップが凄い」という田中美海さんの発言に対して、「括弧書きの、明朝体の“上田麗奈”を意識している」という返答があった。この発言から“表向きの自分”の手がかりが見えてくる気がする。
FIVE STARSでは他にも「今の気分を言葉にできないから『赤』とか『青』とか色で答える」という話もしていて、歌詞中にある「散らばった色の中で選ぶ私の色 だけど形は持っていないの」を連想させる。この言葉にできないという感覚を自分の駄目な部分として話していることから、コンプレックスを覆う表向きの自分というものの輪郭が伺えるかもしれない。
関連して、ラジオハナヤマタ第24回で、日常でなんとなくフィーリングで感じていたことを明確な言葉にしてみる試みを習慣にしたいと言っていたことも、ルーツはこういうことなのかもしれないが、これ以上はただの連想ゲームに陥っている感が否めない。あくまで楽曲のイメージと奥行きの話がしたい。

以上のような理由と、作編曲が田中秀和さんであることから、『ワタシ*ドリ』を聴いて筆者がイメージするのはラジオハナヤマタだ。すごい素で喋れた番組だと話していたし、そうであると強く感じているので、逆説的にラジオハナヤマタを想起する。(“みなみじゃなかったらこんな感じじゃないと思うよ”) ラジオハナヤマタこそが最も美しい青春の時間だと信じているので。それが事実と異なる見解であったとしても……(ラジオハナヤマタ過激派)。

ラジオハナヤマタ最終回の絵が鳥であることも示唆的だと思いませんか?

 

そういうわけで、歌詞中の“あなた”は田中美海さんを想定してオタクスマイルをしているのだが、実際のところは、対になってる曲の『車庫の少女』のことだと思う。どこかに連れて行って欲しがっているのは車庫の少女なので。いや、この曲の“あなた”は表向きの自分が対面する、愛し愛されたい相手であって、内面の自分(車庫の少女)ではないのかな。ちょっとよくわからなくなってきた……。

 


■3.海の駅
作詞:松井洋平上田麗奈 作曲・編曲:rinos
〈この仕事を続けていきたいという強い気持ちを込めた歌〉
・テンポ、リズム、メロディが、アルバムのなかで一番自分らしい曲
・『毒の手』と対になっている。
https://twitter.com/ReinaUeda_Staff/status/809701515984191489

ここからは文量が少なくなる。よくわからないというのが本音。
『海の駅』はまず歌詞が少ないし夢日記成分が強そうなので、本人による解説を参考にするしかない。雑誌やラジオなどによるとこの曲は声優の仕事を歌った曲なのだそうだ。海の中で自由に泳ぐ魚(先輩方)のように、自分も同じように泳げる魚になりたい。しかし広い海の中で、どちらへ向かえばいいかわからない……という思いを歌った曲で、漠然とした広い場所から動き出したいという気持ちが仕事の時の心境と似ている。導いてくれた人たちへの感謝の気持ちも込められている、という。

前に進みたい、ここじゃないどこかに行きたいという気持ちはアルバムを通して示されている。
“前に進みたい”という気持ちが『毒の手』と共通していて、『海の駅』は仕事関係、『毒の手』は人間関係についてであろう。

 

上田麗奈さんと海

――春が到来したら出かけたい場所は?

上田:海! 春の海、行ったことないんです。きっと自由気ままなんだろうなぁ…。私は海が苦手で、見るだけでも怖いくらいなのですが、疲れた時や落ち込んでいる時、ひとりになりたい時、あとは、乗り越えたい壁がある時には、無性に訪れたくなります。修行です(笑)。

上田麗奈フォトコラム第11回・街に訪れた春の色|上田麗奈の「この色、いいな」【コラム】 | WebNewtype

ここでまたラジオハナヤマタを引き合いに出すのだが、ラジオCDVol.4の新録回では、二人がハナヤマタの舞台になった鎌倉の各所を巡り、最後に鎌倉の海を訪れる。その時は「今日は海が怖くなかった」と言っている。

「ここはきっと、美しい海」……美しい海……田中美海!!
というのは冗談にしても、田中美海さんと共に訪れた、ハナヤマタの舞台である鎌倉の海が大丈夫だったというのは、重要なポイントであると考えたい(ラジオハナヤマタ過激派として)。「呼吸を止めるような暗闇さえ彩られて見えるだろう」とは、そういう瞬間の比喩のようにも感じた。
【追記:アトリエReina第9回後半にて、海の話題がありましたね。日本海しか見たことがなく、荒々しく曇っていて寒い暗い世界というイメージの海に死の恐怖を感じていたけど、関東に来てから見た太平洋の海は広くて明るいイメージで、そこまで悪い場所じゃないかもしれないと思った、という内容でした。】
この思考過程はともかく、『海の駅』に込められた、声優の仕事に対する気持ちや、感謝の気持ちの対象に具体的な作品があるとしたら、初主演作品であるハナヤマタの存在は大きいのではないかと思った。変な深読みをしているが、大まかな雰囲気はそんな感じだと思っている。 

 

ゆったりとしたリズムが自分に合っているというのはラジオハナヤマタでも言っていたことなので、リード曲になるのも納得する。というか、恋愛ロードランナーとかをライブで歌いこなしておいて速い曲が得意じゃないというのも信じがたい話だが…。

MVは必見。

上田麗奈 / 海の駅 - Music Video Full Ver. [Debut Mini Album「RefRain」リード曲] - YouTube

 


■4.毒の手

共作詞:上田麗奈 共作詞・作曲・編曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
〈恋愛の歌〉
・『海の駅』と対になっている。
夢日記成分が強い
・③の絵(らしい) 

上田麗奈 | Artist | Lantis web site
https://twitter.com/ReinaUeda_Staff/status/810063454690246657

アルバムの中で一番重い曲。重すぎて、「作詞:上田麗奈、作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND」って文字列やばくないすか?くらいしか自分から言えることがない。テクノボーイズのノンタイ曲っぽい雰囲気。

この曲はアルバム中で最も夢日記の要素が強い楽曲であり、夢の内容についてラジオで詳しい話があった。要約すると、

ある日突然、自分の手から毒が溢れてきた。毒の手は触れた人を亡き者にしてしまう。やがて触れなくても側にいるだけで死なせてしまうようになる。追われる立場になりながら、どうしても家族に会いたくて探し回るが、見つからない。
最後にはにタワービルの最上階にあるガラス張りの部屋辿り着き、そこで死んでいく。死の瞬間、自分は泣いていないのに、鏡に映った自分は泣いているように見えた…。

普通に悪夢では? よしこれを曲にしよう!ってナニモンだよ…。

テーマ的には、自分の駄目なところ(毒)を持った上で相手と接しなければならないし、その自分を認めなければならない。でも駄目な部分があるからもどかしい。しかし、もどかしいのは、前を向いている気持ちがあるということでもある……。この前向きな要素が『海の駅』と共通しているそうだ。


一つ気になるのが、リスアニの記事に曲のテーマとして列挙されていた〈恋愛の歌〉に対応するのがこの『毒の手』だと思われるが、他の媒体では「恋愛」の文字は出てこないということ(他はどの雑誌でも同じようなことを言っている)。自分としては、広く人間関係のこととして受け取って問題ないのだが、楽曲解釈の面で少々気になった。『毒の手』はクレジットが共作詞なので、上田麗奈さんの手で書き直された部分が多いと推測できる。だとすれば恋愛の歌だった初期プロットから若干変化した可能性……というところだろうか。

 


■5.車庫の少女
作詞:松井洋平上田麗奈 作曲・編曲:shilo
〈コンプレックスを描いた歌〉
・『ワタシ*ドリ』と対になっている
・コンプレックスそのもの
・表向きの私を羨ましく見ている私
・④の絵(らしい)
https://twitter.com/ReinaUeda_Staff/status/810426352524464128

表向きの自分を見ている自分。コンプレックス自体。表向きの私に嫉妬し、羨ましく見ている。私が表に出たら嫌われるんじゃないかと思っている。
だそうです。

それ以上はわかりません。

そういうテーマを歌っているのはわかるが、どうして車庫であるのかなどは全然わからない。よくわからなくても良い感じに聴けるのがこのアルバムの良いところ。

中村彼方 on Twitter: "上田麗奈さんの「車庫の少女」でフランス語のセリフがあるのですが、訳詞と声をさせていただいたのです!

ご縁をありがとうございます☆
(聞いてみてネ)"

全然わからん……。

 


■6.あなたの好きなメロディ
作詞:上田麗奈 補作詞:松井洋平 作曲・編曲:佐藤純一(fhána)
〈コンプレックスも何もかも抱えながら進もうという歌〉
https://twitter.com/ReinaUeda_Staff/status/810789452134174720

夜のイメージ。④の絵かな。上田麗奈さんの散歩は夜道の方が好きらしい。
この曲だけは、作詞が上田麗奈であり、松井洋平が補作詞となっている。「全曲の中で一番自分の言葉が多い」という。


アルバムを総括するようなこの曲の働きについては、初めにも引用したリスレゾのレビューが簡潔でわかりやすい。
しかし、看過できない部分が一箇所だけある。

ひとりきりの世界に閉じこもっていた「車庫の少女」の影はもはやなく、そっと囁くように語りかける少女の歌声は柔らかく、ふんわりと包みこむように優しく広がる。慈しみや切なさも交えながら“あなた”へと歌う表情からは、いつも“どこか”へと向かうことを思い続け、ついに“ここ”へとたどり着いた、その喜びが伝わってくる。

上田麗奈 / RefRain – リスレゾ – “ アニメ音楽 × ハイレゾ ” の情報サイト

他の部分には概ね同意できるがここだけは明らかに解釈違いをしていると思う。
なぜならこの曲は、初めて外に出てきた「車庫の少女」に向けて、“今の上田麗奈”さんが語りかけている曲だからである。「車庫の少女の影はもはやない」のではなく、“あなた”が車庫の少女なのである。


そのことについて、Radio RefRain Letter of"R"当該回から文字起こしで引用したい。

今までの1曲目から5曲目まで、こう思い悩んで、ぐるぐる回っていたり、もやもやしていたり、いろんなことがあったんですけど
そういうコンプレックスの自分とか、悩んでる自分とかっていうのも、全部抱えて、全部抱きしめて、歩いていくよ、ってそういうのがコンセプトになっていますね。

これの前の曲が実は『車庫の少女』なんですよ。車庫の少女はコンプレックスを抱いてる自分の、表向きな自分への憧れとか嫉妬とかがあったんですけど、
その女の子が外に出てきたっていうのをまず最初に思い浮かべたんですよね、この曲を最初に聴いた時に。
でもずっと暗い車庫の中にいたら、優しい風とか、優しい月明かりとかも、すごい痛くて刺激的に感じると思うんですよね。
なんか、22,3年間生きてきた、酸いも甘いも22,3年間の中で体験している自分が、大丈夫だよって言ってあげれば、きっと何か起こるんじゃないかって、そんな気がして。
最終的にこの曲が来てくれたことで、気持ち的にもまとまったかなって気が、私自身しますね。

 


というわけです。


尋常じゃないくらいエモくないですか?

01から05を総括するコンセプトが表れているのが歌詞カードでいうと最後のパラグラフですが、このことを踏まえた上で『RefRain』を通して聴くと、一周約30分間の体験とは思えないほどのカタルシスを感じます。
コンプレックスや悩みを全部抱えたまま歩いて行くということは、いずれまた同じ繰り返しを伴うんですよ。でも繰り返していくうちに何か変化があるかもしれない。きっと上田さんのもつ観点は変化に対する機微なんですよね。
後奏の最後のフレーズが『マニエールに夢を』のイントロと同じフレーズになっていて、自然にまた一曲目から繰り返し聴ける構造になっている。つまり繰り返し聴くことを推奨していて、それなら自分もRefRainに付き合って“上田麗奈”を探す試みをするしかないじゃないですか。
このアルバムにはそう思わせるだけの力があります。

 


■まとめ
ここまで書いて、『あなたの好きなメロディ』が直撃した時の精神状態になってしまってるので、まとめ方が思いつかない。全体の主張の方向も見失ってしまった。

『RefRain』が今の上田麗奈さんを切り取った日記や名刺のような作品ならば、敬意を払わずにはいられませんし、これからの上田麗奈さんの作品も見てみたくなりました。
「一緒に“上田麗奈”を探してもらえれば、私としてはすごくうれしいです」*5に向き合いたい気持ちで、このブログを書きました。

 


■参考
リスアニvol.27
声優アニメディア 2017年1月号
声優グランプリ 2017年1月号
声優ゆめ日記 上田麗奈
上田麗奈の「この色、いいな」 https://webnewtype.com/column/color/
Radio RefRain Letter of"R"

 

明らかに間違っている箇所や、リリイベ発の情報などがあればさりげなく教えてください。
こっそり修正します。

*1:声優ゆめ日記 上田麗奈

*2:声優アニメディア 2017年1月号

*3:ラジオ「ReLIFE研究広報課」第2回

*4:ラジオハナヤマタ 店内放送、しませんか? 第2回おまけ

*5:リスアニvol.27